微かな頭痛に燕糸・踊壺(異形の訂正者・b32648)は目を覚ました。
そこは静かな丘、朝でも夜でもない『黄昏の空間』だった…
ただ、自分が何故此処にいるのか、それまで何をしていたのか…
思い出すことができない状況に頭を更にかき回される。
「…ッ!」
突然背後から語りかけられて、ビクリと背筋を強張らせる。
後ろを向くと、そこにはスタイルのいい身体を黒いコートで覆い隠し
銀色の瞳を悲しく濁らせた女性がいた。
「貴女は…?」
踊壺は言いかけた所で思い出した。
知るはずのない記憶、かつてどこかで語り合った『背徳の魔女』。
「ここはある人間の意志に『私』の意思を働きかけて作った場所。
…いや、貴女もあの時からそれを望んでいたんじゃあない?」
クスクスと笑う『魔女』は懐からカードを取り出す。
「…イグニッション…。」
それは能力者の証、カードは複雑な溝の掘られた大鎌へと姿を変え
彼女は『背徳の魔女』の本性を現した。
「私はそんな事望んどらへん、貴女もその筈や!」
「なら貴女、 何 故 其 処 に 居 る の ?」
端整な目を細め、静かな怒りを込めて『魔女』は問う。
踊壺はその威圧感に思わず後ずさる。
「…それは、私の意志や…確かにそれは私の意志や!!
でも、貴女にだって選ぶ権利はあるはずや!!」
ブオッ………「うわ!!」
ズガシュッ!!!!
『魔女』が大鎌を振り下ろすと、整った地面が醜く抉れた。
彼女の大鎌はゴーストを刈るための鎌ではない。
その複雑に彫られた溝で詠唱銀を多く含むゴーストの体組織を抉り取るための大鎌。
そんなもので切り裂かれれば詠唱銀で守護された能力者や来訪者でさえ…
重症ではすまされない。
「…こんなこと意味ない…
貴女がそうでもしなきゃ気が済まないというのなら…
…私は…負けてあげない!!!!!!!!!!」
「!!!!!!!イグニッション!!!!!!!」
反(半)存在との戦いの幕が…切って落とされた…。
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