此処に、破れたいくつかの紙片がある。
(======は破れていて解読不能である)
『2006年7月24日
この日、たった一つの助言によって===の==に成功。即時素体破棄。
====的な条件において不全が確認される。
これは最早人間にとって耐えることのできない致命的欠陥だった。
感情に任せて破棄したそれは、ほんの少しの残留思念を除き再生不可能と断定。
今日この場を持って、私の希望は己の手によって完全に絶たれた。
結社を放棄、かといって死ぬわけにも=るわけにもいかない。
私は仕方なく、私の生まれた故郷へと足を運ぶこととなった。
幸せだった頃の私の象徴、奈良へと。』
『2006年7月26日
予想はついていた、非日常に足を踏み入れたものは非日常を歩むほかないということは。
特に私のような大規模なスポンサーからはなれたものをゴースト共が放置し続けるはずもない。
おろか私は覚醒後学園県内を離れたこともなかった。
必死の逃亡生活の末に、リリス種のゴーストに腕の骨を粉砕される。
常時起動さえしていれば、3日で直るだろうが…世界結界に反応されれば学園に戻ることになるだろう。
研究レポートは手持ちの魔術指南内容を残し破棄した為問題はないが
何より私には居場所がなかった。』
『2006年7月29日
目を覚まし、腕も動かせるようになり、カレンダーで日時を確認できるようになった為レポートを再開する。
どうやら日本に集結している能力者組織は銀誓館だけではなかったようだ。
運悪くリリスの集団に遭遇した私は2年振りの被カニバリズム的な臨死体験を味わい
気がつけば運よく現地の能力者組織に保護されていた。
能力発現前の傷が完全再生しているところを見ると、これは事故再生のみに任されていた?
いや、どうやら回復系の広域アビリティを持つ新種の集団だったようだ。
これもどうやら魔弾術士同様、人間の技術の末に能力となった種別らしい。
東洋のメディウム魔術の系統における正装をした集団、彼らは男女関わらず自らを巫女と呼んでいた。』
『2006年9月1日
完治した私はそのまま現地組織の奥の間へ招待され事情の説明を要求される。
我が師===と共に完成させた魔術指南の様式を見せつつかいつまんで私の経緯を言うと
現地能力者の老体たちはそのままその組織の使役ゴースト…
彼らにとっては信仰の対象らしいが、その生贄にしようかと談義を始めた。
この組織に匿われて二日目には気づいていたことだが、どうやら能力者は18歳を超えれば自らが扱う超常の術と自らの常識との摩擦を起こし
精神に多大な悪影響を及ぼすことが確認された。
その中で、修行中であるところの巫女の一人が組織の上下関係を省みず私を匿うと言い出した。
その巫女はどうやらこの組織(結社?)の団長の娘であるらしく、その条件は承諾されこの身の安全は確保された。
私の身などどうでも良かったのだが…死ぬ場所は選びたかったため感謝しようと思う。
あぁ、今日この日出会った私の命の恩人、その名前を追記しておかなければなるまい。
彼女の名は《燕糸・八重架》、以後記憶の隅にとどめておくことにしよう。』
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